GPSウォッチとは

GPSウォッチを使うメリット・デメリット
一般的に、GPS機能がついた腕時計は「GPSウォッチ」と呼ばれている。
一度でもGPSウォッチをつけてランニングや登山などの運動をすれば分かることだが、GPSウォッチを使えば、同じランニングや登山を今までよりも各段に楽しむことができる。
ジョギング・ランニング 登山
運動中はGPSウォッチに表示される数値を参考できるし、運動後もGPSウォッチが提供するアプリやサイトなどから、今日はこんなに走ったんだ、こんな道を通ったんだ、こんなに高い山を登ったんだ、と振り返ることができる。
また、その結果をみると、自然と今度はもっと時間を縮めてみよう、今度は違った道を通ってみよう、次回はもっと険しいルートを登ってみようと、新たな楽しみや意欲が次々に湧いてくるのだ。
ちなみに、GPSは「Global Positioning System」の略称で、衛星を使った全世界的な位置測位システムのこと。
GPSは地球上のどこにいても位置を測定できるので、GPS機能を備えたGPSウォッチをつけていれば、現在のいる位置やこれまで走った(登った)距離、経路を確認することができる。
GPSウォッチの中には、こうしたGPSの機能を利用し、ランニングや登山で目的地までの方向や距離などをナビゲーションする機能を備えた高機能なモデルも存在する。
最近では、スマートフォンのアプリでGPSを利用したものはあるが、ランニングや登山などの運動中にストレスなくGPS機能を利用するなら、絶対にGPSウォッチをお勧めしたい。
GPSウォッチといっても、その機能はメーカーやモデルによって様々で、価格も1万円以内で入手できるものから10万円ぐらいするものまで幅広いので、購入の際に迷う人も多いはず。
特にGPSウォッチをはじめて購入する人にとって、GPSウォッチのメーカーのほとんどが海外メーカーであり、これまで聞いたことのないメーカーもあり、海外メーカーの製品は日本メーカーの時計や電子機器のように店頭での情報が充実しているとはいいがたい。
メリット
- 走っているペースや行動した距離がリアルタイムで把握できる
- 腕時計スタイルなので、ストレスなく情報が確認できる
- GPS機能以外にも、高度計、心拍計、スマホ通知連携など多機能
デメリット
- GPSウォッチを製造、販売するメーカーは聞きなれない海外メーカーも多く、特に初心者にはどのモデルを購入したら良いか分かりづらい
- 海外メーカーのモデルは、日本語のマニュアルが充実していない場合がある
- 機能が多いモデルを購入した場合、機能を使いこなせないことがある
- 高機能なモデルは価格が高い
- 普通の腕時計と違って充電が必要
目的によって必要な機能が異なる
GPSウォッチはアウトドアのシーンで利用されることが多いので、時計としての基本機能やGPS機能の他にも、様々な機能を備えているモデルが多い。
メーカーにもよっても異なるが、高機能モデルになると以下のような機能を備えている。
(メーカーやモデルによってはない機能もあるので、必ずメーカーのホームページでモデルごとの機能や仕様を確認すること)
- 時間計測(ストップウォッチ、ラップ計測など)
- 心拍計
- 高度計
- 気圧計
- 温度計
- 日の出、日の入り時刻
- スマートフォン連携(通知連携、アプリ連携など)
はじめてGPSウォッチを購入する際によくあるケースとして、とりあえず多くの機能を備えたモデルを選んで購入してみたものの、結局ほとんどの機能を使いこなせないという状況に至ってしまうことがある。
こうした残念な状況を避けるためにも、まずは初心者は自分に利用シーンに必要な機能を備えたモデルを購入し、ある程度使いこなせるようになってから、高価な高機能のモデルを購入することをお薦めしたい。
ランニングや登山など利用シーンによってGPSウォッチに求められる機能は異なるので、まずはGPSウォッチの代表的な機能を把握し、それぞれのシーンで必要になる機能について確認しよう。
GPS機能
GPSウォッチの基本となる機能。
GPS(Global Positioning System)を使って、現在地や走っているペース、行動した距離を計測する。実は、位置情報の計測に使用される衛星測位システムには、本家のGPS(米国、元来は米軍用システム)以外にも、GLONASS(ロシア)、Galileo(EU)、みちびき(日本)などがあり、対応する衛星測位システムや衛星の数が多いモデルほど、より正確な計測ができるといわれている。
ルート記録、ナビゲーション
GPSによる位置情報と地図情報を連携されることで、移動したルートの記録や目的地までのナビゲーションを提供する機能。低価格モデルではサポートしないが、高機能モデルではこれらの機能が充実している。
ルート機能があれば、あの時、こんなルートでこんなにたくさんの距離を走ったんだ、登頂口から山頂までこんな高さを登ったんだとあとから振り返ることができるので、とても達成感が得られる。
心拍計
1分間に心臓が拍動する回数を示す心拍数を計測する機能。心拍数を計測すると、ランニングなどの有酸素運動における運動強度を把握できる。最近は光学式心拍計を搭載した腕時計が多く登場し、腕に装着するだけで心拍データの計測ができる。心拍数の結果をみることで、今後のトレーニングメニューの負荷を調整することも可能になる。
時間計測機能
スタートからゴールまでのトータル時間の計測、1kmごとのラップ時間の計測など。時間を競うスポーツで使用する場合には、操作性や文字の見やすさも重要なポイントになる。
防水機能
スポーツやアウトドアでGPSウォッチを利用するなら、防水性能も重要。ランニングなどのスポーツであれば、いわゆる「生活防水」(雨による水滴や手洗いの際にかかる水しぶきなど日常生活の行動範囲であれば耐えられるとされている防水性能)で足りるかもしれないが、水泳や激しい風雨にさらされる可能性がある登山などで使用するのであれば、高い防水機能があった方が安心。
気圧計
気圧センサーにより気圧を計測する機能。一定時間における気圧の変化をもとに、天気予報機能を提供するモデルもある。
高度計
GPSや気圧センサーを使用して高度を測定する機能。登山や山岳地帯を走るトレイルランニングでは欠かせない機能の一つ。
温度計
気温を計測する機能。100m高度が上昇すると、気温は約0.6℃気温が下がるといわれるので、麓からの頂上までの高度差が大きい登山には、温度計の機能があると役に立つ。ただし、腕に装着したまま計測すると、体温を計測してしまう場合があるので、気温を計測する際には腕から外して計測した方が正確な数値を計測しやすい。
日の出、日の入り時刻
GPSによる現在地情報をもとに、その地点の日の出時刻と日の入り時刻を教えてくれる機能。危険防止のため、日中の行動が必要となる登山では便利な機能。
スマートフォン連携
今や一人1台所有し、いつでもどこでも持ち歩くスマートフォン。ただ、近年はスマートフォンが大画面化する傾向にあり、ランニング中などの運動中は邪魔な存在に。
スマートフォンとの連携機能があれば、スマートフォンをランニングポーチやバックパックにしまったままでも、スマートフォンの通知を確認したり、音楽再生を操作したりできるので便利。
また、スマートフォン専用アプリを使って、トレーニングの後に、走った距離、ルート、高低差、心拍数などの様々なデータを手軽にチェックすることもできる。
音楽再生
ジョギングする際に音楽は欠かせないという人も多いはず。モデルによっては、本体に音楽ファイルを保存し、音楽再生できる機能を備えている。スマートフォンを持ち歩かなくても、GPSウォッチ本体とワイヤレスイヤホンを接続することで、ジョギング中も音楽を楽しめる。
連続駆動時間の長さ
1日、1~2時間程度のトレーニング(GPS機能の利用)であれば、さほど気にする問題はないが、長時間に及ぶ競技でGPS機能を使用する場合やなかなか充電するタイミングがない生活を送っている人にとってはモデルごとの連続駆動時間は注目したいポイント。
GPSウォッチは充電式なので、途中でバッテリーが切れてしまってGPS機能が使えずに計測ができなかったという事態は避けたい。
また、氷点下近くに気温が下がるとバッテリーの消費が通常より短くなるので、寒いシーズンや標高の高い山の登山で使用する場合には注意したい。
用途別おすすめ機能
利用シーン | 必要な機能 | あった方が良い機能 |
ウォーキング | GPS 歩数計 生活防水 | 心拍計 ルート記録 |
ジョギング | GPS ラップ、ペース計測 生活防水 | 心拍計 ルート記録 |
マラソン | GPS ラップ、ペース計測 生活防水 | 心拍計 ルート記録 5時間以上継続利用可能なバッテリー |
トレイルランニング | GPS ルート記録 高度計 長時間利用可能なバッテリ 高い防水性 | ラップ、ペース計測 気圧計 心拍計 日の出、日の入り時刻 |
登山 | GPS ルート記録 高度計 気圧計 高い防水性 | 日の出、日の入り時刻 長時間利用可能なバッテリ |
後悔しないGPSウォッチ選び
ある程度、必要な機能が絞れたら、最終的に以下のポイントも気にして、お好みのメーカーやモデルを見つけるのがよいと思う。
- デザイン
- 重さ
- 装着感
重さや装着感は意外と重要。GPSウォッチは繰り返し、長時間使用するものなので、GPSウォッチが自分の腕にフィットすることが大切。重さを感じたり、ベルトが長すぎたり、時計と腕の接触する箇所に違和感を感じるモデルは避けた方が無難。
できる限り、店頭で試着することをお薦めする。
GPSウォッチの代表的なメーカー
GPSウォッチでは、以下のメーカーが代表的な存在。最近は、スマートフォンを開発するメーカーも参入している。
GARMIN(ガーミン)
「GPSといえば、ガーミン」といわれるほどGPS分野では先駆者的な米国発のメーカー。現在、本社はスイスにおいている。
当初は、航海や航空で使用するGPSレシーバーを生産していたが、2000年初頭からランナー向けのGPSウォッチの販売を開始した。
GPSウォッチのモデル数をとても多く、どのモデルを購入すれば良いか迷ってしまうほど。
SUUNTO(スント)
フィンランドに本社をおくメーカー。もともとはフィンランド軍のコンパスを生産していた企業だが、その後スポーツやアウトドアシーンで活用できる機器を多数販売している。
北欧らしい洗練されたデザインや機能性で、根強いファンをもつ。
Polar(ポラール)
これまたフィンランドに本社をおくメーカー。もともとは心拍計を中心とした製品を多く製造・販売していたが、近年は心拍計測機能がついたGPSウォッチを販売している。
トレーニング計画などで心拍計測機能を重視する人にはおすすめ。
Fitbit(フィットビット)
米国カリフォルニア州に本社をおくメーカー。2007年の設立以来、比較的低価格の歩数計や心拍計を製造販売してきたが、近年はGPS機能を備えた高機能モデルも展開。
2019年11月、アルファベット社(Google)によってFitbit社が買収されることが発表された。
今後、もっとも注目されるメーカー?
CASIO(カシオ計算機)
丈夫な腕時計「G-SHOCK」やアウトドア向け腕時計「PROTREK」を展開する日本を代表する日本の時計メーカー。GPSウォッチと呼べるモデルの種類は少ないが、操作マニュアルなどが充実している日本メーカー製にこだわるなら検討してみては。
HUAWEI(ファーウェイ)
中国の深圳に本社をおくメーカー。スマートフォンだけでなく、GPSを備えた高機能な時計(スマートウォッチ)も積極的に展開。HUAWEI製のスマートフォンを使用している人は、連携できる機能が多いので検討してみては。
Apple(アップル)
ご存じ、「iPhone」で有名な米国カリフォルニア州に本社をおくメーカー。GPS機能を搭載した「Apple Watch」を展開。
「iPhone」ユーザーにとっては、時計とスマートフォンで連携する機能の豊富さが魅力。
【お悔み】エプソン販売
一時は「WristableGPS」シリーズで国内のGPSウォッチ市場を盛り上げたメーカーだったが、2019年11月にGPSウォッチの生産を中止するすることを発表。
すでに「WristableGPS」の製品紹介サイトもクローズしている。
日本のメーカーらしいコンパクトなデザイン、バッテリーの持ちの良さなどを評価する声もあったのでとても残念。
GPSウォッチの今後について
これまではGPSや心拍などの計測技術に強味のもつメーカーが、基本的にはGPSウォッチ単体で使用することを前提とした商品開発を行い、GPSウォッチの業界を牽引してきた。
しかし、今後は生体データというビッグデータに目を付けたIT企業が、「スマートウォッチ」として時計とスマートフォンを連携させる付加価値サービスをもって参入することが予想される。
最近はGPSウォッチを提供するメーカーの顔ぶれも増えて、これから各社からどのような新しいモデルやサービスが登場するのか、とても楽しみである。